医師が個人事業主として仕事をする際、開業届を出すべき?

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医師が個人事業主として副業を行うことにはいろいろなメリットがあります。
放射線科の先生は、個人事業主として遠隔画像診断受託事業をされる方も多いのではないでしょうか。
個人事業主として仕事を始める際に分からないことの一つ、開業届について解説します。

 

開業届とは

開業届は、正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」といい、所得税法第229条によって規定され個人事業主が事業を開始した際に1か月以内に税務署へ提出しなければならない書類です。
しかし、出さないことによって罰金などが課されることがないため、あえて開業届を提出しないままフリーランスとして働いている人も存在します。

 

 

開業届提出のメリットとデメリット

開業届は基本的には提出すべき書類ですが、開業届提出のメリットとデメリットを以下にまとめます。

 

メリット

・青色申告が可能になり、最大65万円の青色申告特別控除をはじめとした税制メリットが受けられる
・小規模企業共済に加入できる
・赤字を3年間繰り越せる
・屋号名義で銀行口座を開設できる
・個人事業主としての証明になる

 

デメリット

・帳簿付けの手間が増す
・失業保険を受けられない可能性がある
・扶養から外れる可能性がある。

 

開業届を出すことによる大きなメリットは青色申告ができるようになることです。
特に収入の大きな医師にとっては青色申告をすることのメリットが大きいので、開業届は出しましょう。

 

 

青色申告のメリットとデメリット

青色申告のメリットとデメリットは以下のような点が挙げられます。

メリット

・最大65万円の青色申告特別控除を受けられる
・赤字を3年間繰り越せる
・家族への給与を必要経費として計上できる(青色事業専従者給与)
・減価償却の特例を受けられる
・一括評価分の貸倒引当金の計上が可能

 

デメリット

・事前に「所得税の青色申告承認申請書」の提出が必要
・65万円の特別控除を受けるためには複式簿記による記帳が必要
・帳簿の記帳や保存など、事務作業の負担が増える。

 

青色申告は多くの税制上の優遇措置を受けられる一方で、より詳細な帳簿管理が求められます。
ただし、実際には作業の多くを税理士に依頼することができます。
青色申告特別控除分だけでも税理士費用を上回る節税効果が得られる場合もあるので、特にこだわりが無ければ税理士に依頼した方が楽だと思われます。

 

 

税理士の探し方

医師にとっては馴染みのない場合も多い税理士ですが、どうやって探せばよいのでしょうか。

税理士の探し方には、以下のような方法と特徴があります。

 

1.知人や取引先からの紹介

信頼できる知人や取引先からの紹介は、信頼性の高い情報源となります
・同業者から紹介を受けると、業界特有の課題に詳しい税理士を見つけやすい
・紹介者の実際の経験談を聞くことができる
・紹介された税理士との初回面談がスムーズになりやすい

 

2.インターネットで検索する

インターネット検索は、税理士を探す最も簡単で手軽な方法の一つです。
・検索キーワードを工夫することによって、自分のニーズに合った税理士を探せる
・税理士事務所のウェブサイトやSNSで専門分野や実績を確認できる
・税理士の人柄や詳細なサービス内容を把握するのが難しい場合がある

 

3.税理士紹介サービスを使う

税理士紹介サービスは、効率的に複数の税理士を比較検討できる方法です。
・自分の条件に合った税理士を紹介してもらえる
・無料で利用できるサービスが多い
・複数の事務所を簡単に比較できる
・専門家の客観的な視点で税理士を探してもらえる
・報酬交渉や断りの交渉も代行してもらえる場合がある

これらの方法を組み合わせて、自分に最適な税理士を見つけることが重要です。それぞれの方法にはメリットとデメリットがあるため、自分の状況やニーズに合わせて選ぶことをおすすめします。

 

 

医師が個人事業主として活動する際に開業届を出すべき?

医師が個人事業主として活動する際に開業届を出すべきかについて、開業医の場合と副業の場合に分けて説明します。

 

開業医として個人事業主になる場合: 以下のような理由で、開業届を出すことが推奨されます。

・事業の証明

開業届を提出することによって、個人事業主としての正式な証明が得られます。
金融機関から融資を得る、経済産業省や厚生労働省の補助金や助成金を申請する、クリニックの賃貸借契約をする、など様々な場面で開業届の控えの提出が求められます。
したがって、開業をするためにはほぼ開業届の提出はほぼ必須と言えます。

 

・屋号を名義とした銀行口座を開設できる

開業届を提出することで、クリニック名や屋号を名義とした銀行口座を開設できます。
屋号を名義とした銀行口座は取引先の信用を得やすく、また、事業用と個人用の口座を分けることでお金の管理がしやすくなります。

 

・職業の証明ができる

病院に勤めている場合は、勤め先の社員証や在職証明書を発行してもらうことが可能ですが、開業医の場合はそのようなものはありません。
そのため、クレジットカードの発行や賃貸の契約などで職業の証明が必要な時に、開業届の写しで職業を証明することができます。

 

・青色申告の利用

”青色申告のメリットとデメリット”の項で記載したように、様々な税制上の優遇措置が受けられる青色申告が利用できるようになります。

 

 

副業として個人事業主になる場合:開業届を出すかどうかは状況によります。

副業として事業を行う場合は、本業として行う場合より職業や事業の証明としての開業届の意義は低いと思われますので、青色申告の必要性から考えると良いでしょう。

 

・収入が大きい場合

副業としての収入が大きく、事業的規模である場合は、開業届を出すことで節税効果が高まります。開業届を出すことで、事業所得として申告でき、青色申告の特典を受けることが可能です。

 

・収入が小さい場合

副業の規模が小さく、収入が少ない場合は、開業届を出さずに雑所得として申告することも可能です。

この場合、開業届を出さないことによる罰則はありませんが、青色申告の特典を受けることはできません.

 

副業の具体例としては、非常勤勤務、オンライン診療、セミナー講師、医療コンサルタントなどがあります。
それぞれの副業の規模や収入に応じて、開業届を出すかどうかを判断することが重要です。開業届を出すことで得られるメリットと、手間やコストを比較検討して決定することが推奨されます。

 

 

医師が副業で個人事業主として活動する際の注意点

医師が個人事業主として副業を始める際には、いくつかの重要な注意点があります。

 

・勤務先の規定を確認する

副業が禁止されていないか、事前に就業規則を確認する必要があります

 

・収入源を適切に選択する

医業以外の収入(講演料、原稿執筆料など)を計上することが推奨されます

・経費の適切な管理

プライベートの支出と事業経費を明確に区別し、適切に計上することが重要です

 

・税務知識の習得

個人事業主としての税務処理や確定申告について学ぶ必要があります

 

・会計処理の負担増加

日々の請求書発行や支払い手続き、取引記録などの事務作業が増えます

 

・確定申告の必要性

副業収入が20万円を超える場合、確定申告が必要となります

 

・社会保険の取り扱い

個人事業主として国民健康保険または医師国保に加入する必要があるかを確認します

 

・小規模企業共済への加入検討

掛金が全額所得控除できる小規模企業共済への加入を検討することも有効です

 

これらの点に注意を払いながら、個人事業主としての活動を進めることが重要です。必要に応じて税理士や社会保険労務士などの専門家に相談することも検討しましょう。

 

 

まとめ

医師が個人事業主として活動する際に重要となる、開業届についてまとめました。
昨今、政府も推奨している副業・兼業ですが、注意点を守って実施すれば所得の増加や多様なキャリアの形成など様々なメリットをもたらしてくれます。
本記事を参考に、個人事業主としての活動を検討してみてはいかがでしょうか。

 

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