Ai(死亡時画像診断)について解説
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死因究明の手法の一つとして、Ai(死亡時画像診断)があります。
これは、遺体を傷つけることなく死因究明を実施することが可能な手法であり、近年、関心が高まっています。
今回は、このAi(死亡時画像診断)について解説します。
死因究明の重要性
正しい死因を究明することにより、亡くなった理由を正確に知りたいというご遺族の気持ちに応えることが出来ます。
また、医学の発展や公衆衛生の向上、さらには、犯罪死の見逃し防止等の観点からも重要とされています。
死因究明の現状
死因を究明する方法には、検視、死体見分、検案、解剖、そしてAiがありますが、このなかでもっとも精度が高い手法は解剖とされています。
解剖にも複数の種類があります。
- 病理解剖:医療機関で亡くなった場合、ご遺族の承諾のもと行われる解剖。
- 司法解剖:病死や自然死を除いた死(異状死)体のうち、犯罪性が疑われる場合、警察により行われる解剖。
- 監察医解剖:上記以外の場合のうち、監察医制度施行地域で行われる解剖。
- 承諾解剖:監察医制度のない地域でご遺族の承諾のもと行われる解剖。
- 新法解剖:2023年4月に施行された「死因・身元調査法」による、警察署長が必要と判断した場合、ご遺族の承諾なしで可能な解剖。
平成 21 年人口動態統計によると【総死亡数】 1,141,865体、【解剖あり死体数】 30,939 体であり、解剖された割合は 2.7%と非常に低い状況です。
解剖が実施される割合がこのように低い要因の一つとして、司法解剖や監察医解剖以外で解剖を行う際に、ご遺族の承諾が必要であることが考えられています。
解剖は、ご遺体を傷つけてしまうこと、検査に時間がかかることがありますので、ご遺族の同意を得ることが難しい場合があるのです。
Ai(死亡時画像診断)とは何か?
Ai(Autopsy imaging)は、CTやMRIなどのモダリティを使用して遺体を検査し、死因究明を行う検査手法です。
日本では『死亡時画像診断』とも呼ばれます。
遺体内部の画像をCTやMRIで取得することで、解剖を行うことなく体表では分からない情報を得ることが出来ます。
※Ai(死亡時画像診断)を行う際には、ご遺族の同意が必要となります。
Ai(死亡時画像診断)は現在注目されている
Ai(死亡時画像診断)は、CTやMRIを用いた撮影による検査方法ですので、解剖とは異なり、身体を傷つけない非侵襲的な検査となります。
すなわち、遺体へ配慮した検査方法ということです。
また、Ai(死亡時画像診断)は解剖よりも早く診断結果を出すことが可能です。解剖では検査に半日~1日かかるところ、Ai(死亡時画像診断)であればけんさそのものは数十分で終わります。Ai(死亡時画像診断)は迅速な死因究明が必要な場合、特に有効ということです。
なお、10年以上前となる平成21年1月に実施された一般病床を有する病院に対するアンケート調査によると、遺体に対して何らかの画像撮影したことのある医療機関は 876 施設(アンケート調査有効回答数2,450件の35.8%)という結果になっています。
参考:死因究明に資する死亡時画像診断の活用に関する検討会 報告書
Ai(死亡時画像診断)すでに多くの医療施設で取り組まれており、技術の進歩と精度向上により、注目度はますます高まることでしょう。
Ai(死亡時画像診断)の流れと注意点
Ai(死亡時画像診断)の依頼発生から実施までの流れは以下です。
- 主治医から死因検証上必要とされる場合、誰の許可を得て、誰にオーダーするかについて命令系統を確認する。
- ご遺族に対し Ai について十分説明の上、承諾書を取り、運用管理者に承諾書を提出する。
- 検査時間については、診療時間との関係を慎重に調整する。
- 救急外来、病室または霊安室からの搬送経路について診療時間との関係で調整を図る。特に臨床使用機であれば、一般患者等への配慮が必要になる。
- 標準化された撮影条件で検査を実施する。
- 撮影した画像データの取り扱いには十分に注意し、必要に応じた画像処理、規定された方法で画像を保管する。
- 使用した装置、遺体情報、使用時間、撮影条件等を記録した実施報告書を作成する。
そして、依頼の受付から実施するにあたり多くの注意点があります。
例えば、以下のようなことが挙げられます。
- Aiにおいては、院内で死亡した患者、来院時に心肺停止で死亡確認された患者、診療関連死の疑いがある患者、警察が介入する患者が考えられるため、目的を明確にし、適切な撮影を行う必要があります。
- Ai実施は、一般患者のいない時間帯が望ましいが、都合や運用方針により診療時間内に行われることもあり、一般患者に対する配慮が必要です。
- 死後からAiまでの経過時間が長い場合、霊安室や冷蔵庫での保存に注意が必要です。
- 死後間もない遺体の搬送時には、マスクやキャップを着用して顔の一部を出した状態で搬送するなどの工夫が必要です。
- 撮影条件、3D画像処理の有無、画像データ保管の方法などをあらかじめ取り決めて、撮影者による差を最小限にする工夫が必要です。
- CT検査だけでなく、MRI検査や小児Aiでの骨X線撮影なども想定し、検査方法と検査室の運用を決めておく必要があります。
各段階における留意点の詳細は、以下をご参考ください。
Ai(Autopsy imaging:死亡時画像診断)における診療放射線技師の役割― Ai 検査ガイドライン ―(日本診療放射線技師会)
Ai(死亡時画像診断)の検査費用
Ai(死亡時画像診断)にかかる費用は、おかれた状況によって、金額や負担者が変わることがあります。
筑波メディカルセンター病院の放射線技術科 田代 和也 先生(https://plaza.umin.ac.jp/~ai-ai/reading/proposal/proposal_138.php)によると、
「全73施設のうち52.1%で遺族負担、41.1%でAi実施施設負担、26.0%で生前画像として保険請求、43.8%で依頼元(警察)負担としていた。
そして、その請求金額は9000円~65000円とかなりのばらつきがあった」
とのことです。
厚生労働省からはAi(死亡時画像診断)の費用については、国庫から拠出する仕組みを作るべきであると提言されています。
📚参考サイト
死因究明に資する死亡時画像診断の活用に関する検討会 報告書(厚生労働省):https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001j3a1-att/2r9852000001j3e0.pdf
オートプシー・イメージング学会:https://plaza.umin.ac.jp/~ai-ai/about/guideline.php
Ai(Autopsy imaging:死亡時画像診断)における診療放射線技師の役割― Ai 検査ガイドライン ―(日本診療放射線技師会):https://www.jart.jp/docs/Aiguideline_170310.pdf