大腸CT検査(CTC)について解説
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大腸CT(CTC)検査は、内視鏡を使用せずに大腸がんやポリープを検出する検査方法です。
日本で普及し始めてからまだ20年ほどで、歴史が浅い手法となります。
統一された手法やガイドラインが確立していないため、各施設でやり方が少し異なりますが、
・内視鏡を使うより苦痛が少ない
・検査が短時間
という点はCTC検査の共通メリットです。
ただ、メリットばかりではなく、精度が内視鏡には及ばないことや、検査ができる施設や技師、読影できる先生が少ないなどの問題もあります。
今回は、このCTC検査について、検査方法や診断できる疾患、受診出来ない患者の条件、保険適用、利点と欠点など、情報を整理しました。
(参照元は記事下部に記載)
▶大腸CT検査(CTC)と大腸内視鏡検査(大腸カメラ)の違いについてはこちら
大腸CT(CTC)とは
大腸CT検査(CTコロノグラフィー:CTC)とは、大腸をCTを使って詳細に検査する手法です。
内視鏡検査と比較して、下剤の服用量が少なく、所要時間も約15分と短い検査となります。大腸がんの初期検査や、便潜血検査で陽性となった場合の追加検査として使用されることもあります。
手順としては、まず肛門から細い管を通して大腸に炭酸ガスを注入し、腸を膨張させます。そして、CT撮影を実施。その後、特別なワークステーションを使用してCT画像をもとに『3次元画像』を生成し、観察・診断を行います。
内視鏡を使用しないため、苦痛が少ない、という利点があり、また腸の癒着などで内視鏡挿入が難しい患者にも適用可能です。
CTC検査で診断できる疾患
以下が、CTC検査で診断できる主な疾患です。
・大腸がん: CTC検査は大腸がん(大腸内の腫瘍)の検出に非常に有用です。腫瘍の存在、サイズ、位置などを評価することができます。
・大腸ポリープ: 腸管内にできる小さな腫瘍であり、一部のポリープは悪性腫瘍に進展する可能性があります。CTC検査は、これらのポリープを検出することができます。
・炎症性腸疾患: 大腸の炎症性腸疾患、例えばクローン病や潰瘍性大腸炎などの病変を検出することができます。
・大腸の異常: 大腸内に腫瘤や狭窄(狭くなった部位)がある場合、それらの異常を検出し、その特性を評価するためにCTC検査が行われることがあります。
・大腸の虚血: 大腸内の血液供給が不足する虚血状態は、CTC検査で視覚化でき、検出することができます。
・大腸の奇形: 先天的な大腸の奇形や異常もCTC検査で判明させることができます。
※確定診断のためには追加の検査や組織の採取(生検)が必要な場合があります。正確な診断結果を得るためには、医師との相談が重要です。
CTC検査の精度
CTC検査の診断精度は、近年の報告では10㎜以上のポリープやがんに対する感度が90%以上であることが示されています。これは、大腸内視鏡検査と同等の精度であると言われています。ただし、5 – 9 mm の病変は許容できる範囲、5 mm 未満の病変は明らかに内視鏡に劣るとされています。
CTC検査の用途および、検査不可なケース
CTC検査は、主に大腸内の異常や疾患のスクリーニングや診断を目的とした診断法ですので、大腸がんの早期発見を促す目的で行われることが一般的です。
また、大腸の症状(下腹部の痛み、排便の変化、出血など)がある場合には、これらの症状の原因を特定するためにCTC検査が検討されることがあります。さらに、以前にポリープが見つかった場合、その成長や変化を追跡するためにもCTC検査が利用されます。
他にも、 腸に狭窄や癒着があり内視鏡が入りにくい方、内視鏡の苦痛を避けたい方にも適した検査です。
ただし、CTC検査は放射線を使用するため、妊娠中の女性や特定の健康状態を持つ人々には適さない場合があります。そのため、検査の適否やタイミングは医師としっかり相談する必要があります。
CTC検査の所要時間
大腸に炭酸ガスを注入してから、仰向けとうつ伏せの2パターンで撮影し、およそ15分で検査が終了することが多いとされています。
CTC検査は保険適用できるのか?
CTC検査は、大腸がんが疑われる場合や、他の検査結果(便潜血陽性、画像検査、腫瘍マーカー上昇など)に基づいて、保険診療で受けることが可能です。ただし、腹痛などの症状だけでは保険診療の対象外となるため、注意が必要です。
CTC検査の検査費用の相場
保険診療(3割負担)で5,000~6,000円程のケースが多いようです。自費診療であれば、20,000円程が相場です。
CTC検査の費用は、地域、医療機関の種類、保険適用の有無、検査内容と付帯サービスによって費用が変動します。正確な費用を知るためには、受診を希望する医療機関に直接問い合わせましょう。
CTC検査のメリット
以下が、CTC検査の利点となります。
・腸管癒着など内視鏡の挿入が困難な患者においても、CTC検査は体への負担が小さく、苦痛を最小限に抑えて検査を行うことができる。
・内視鏡検査に不安を抱える患者にとって、内視鏡を使用せずに行える精密な検査法であり、不安の軽減になる。
・大腸内視鏡検査に比べ、事前の下剤摂取量が大幅に少なくて済む。
・3次元画像にすることで死角なく検査を行うことができる。
※大腸は他の消化管と比べて複雑な形態をしており、内壁には、粘膜の表面積を拡大するためのヒダが無数に存在しています。大腸内視鏡検査の場合、このヒダによって、見えない死角が生じてしまいます。
▶大腸CT検査(CTC)と大腸内視鏡検査(大腸カメラ)の違いについてはこちら
CTC検査のデメリット
以下が、CTC検査の欠点です。
・CTC検査は形態の変化を観察するだけであり、組織採取やポリープの切除などの治療は行えない(内視鏡なら観察しながら切除が可能)。
・CTC検査の結果に基づいて異常が検出された場合、後日大腸内視鏡検査が必要とされることがある。
・CTC検査は放射線を使用するため、医療被ばくのリスクがある。
・5 mm 未満の病変に対しては精度が低く、小さなポリープなどは検出しにくい(内視鏡であれば発見できる)。
まとめ
大腸CT(CTC)検査は、内視鏡を使用せずに大腸がんやポリープを検出する検査です。内視鏡を使用できない、または使用したくない患者にとって有効な手法です。内視鏡では死角になる部分の病変も、CTC検査であれば見つけることが可能です。ただ、医療被ばくのリスクや小さな病変は検出しにくいというデメリットがあり、また内視鏡と違って同時に治療を行うことはできません。事前に医師に相談し、適切な検査方法で受診することが極めて重要です。
📚参考サイト
大阪がん循環器病予防センター(http://www.osaka-ganjun.jp/medical/examination/colorectal/ctc.html)
日本大腸肛門病学会(https://www.coloproctology.gr.jp/modules/citizen/index.php?content_id=7)
COLOR +DA(https://www.mrso.jp/colorda/az/1968/)