全身がん検査の新しい選択肢:DWIBS(ドゥイブス)
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1. 検査の意義
日本人の死因の第一位はがんです。
医療技術が進歩した現在でも、がんを早期に発見できるかどうかが治療成績を大きく左右します。
従来は、全身を一度に調べる方法としてPET-CTが広く利用されてきました。PET-CTは放射性薬剤を体内に投与し、がん細胞の糖代謝の高さを利用して腫瘍を描出する検査です。
しかし、被ばくの問題や検査時間の長さ、食事制限や注射が必要であることなど、患者にとって負担が大きいという課題がありました。
こうした背景から、より安全で負担の少ない検査方法が求められてきたのです。その答えのひとつが、MRI技術を応用したDWIBS検査です。
2. DWIBSの仕組み
DWIBSは「Diffusion-weighted Whole body Imaging with Background body signal Suppression」の略で、直訳すると「背景信号を抑えた全身拡散強調画像」となります。
MRIの技術を応用し、体内の水分子の動きを画像化することで腫瘍を検出します。がん細胞は正常な細胞よりも密度が高く、水分子の動きが制限されるため、画像上では白く光って見えるのです。
DWIBSはこの性質を利用し、全身を一度に撮影して腫瘍の有無を調べます。2004年に秋田大学客員教授の高原太郎医師によって考案され、現在では国内外の医療機関で導入が進んでいます。
最大の特徴は、放射線を使わないため被ばくがなく、患者にとって安心して受けられる検査であることです。
3. PET-CTとの比較
DWIBSとPET-CTはどちらも全身を調べることができる検査ですが、原理が異なるため得意とするがんの種類も違います。
PET-CTは腫瘍の糖代謝の高さを利用するため、甲状腺や肺、胃のがんに強みがあります。一方、DWIBSは細胞密度の高さに注目するため、尿路系(腎臓・尿管・膀胱・前立腺)、肝臓、膵臓、大腸のがんに適しています。
検査時間もDWIBSは30分から1時間程度と短く、PET-CTのように食事制限や注射が不要です。費用はDWIBSが5~8万円前後、PET-CTは10万円程度とされており、費用面でも差があります。
両者は競合するのではなく、互いの弱点を補い合う関係にあると考えられています。

4. 検査対象と適応
DWIBS検査は、患者がMRI装置に横たわり、全身を撮影することで行われます。
検査時間は30分から1時間程度で、PET-CTのように絶食や放射性薬剤の投与は必要ありません。糖尿病患者でも受けられる点は大きな利点です。
ただし、体内に金属製のプレートやペースメーカー、人工内耳がある人は検査を受けられません(刺青のある方も検査ができないことがあります)。これはMRIの磁場が金属に影響を与えるためです。
DWIBSは特に尿路系や肝臓、膵臓、大腸のがんに有効とされますが、胃や肺のがんには不向きとされています。したがって、患者の状態やリスクに応じて検査方法を選ぶことが重要です。
5.メリットと課題
DWIBSの最大のメリットは、放射線被ばくがないことです。
繰り返し検査を受けても安心であり、若年層や検査を頻繁に受ける必要がある患者にとって大きな利点です。また、食事制限や注射が不要で、検査時間も短いため、患者の負担が軽減されます。
さらに、炎症や腫瘍を幅広く描出できるため、全身を網羅的にチェックすることが可能です。
しかし課題もあります。胃がんや肺がんの検出には不向きであり、炎症も腫瘍と同じように映ってしまうため誤判定の可能性があります。また、検査を受けられない条件があること、導入している医療施設がまだ限られていることも課題です。
6. まとめ
DWIBSは「被ばくゼロで全身を調べられる次世代のがん検査」として注目されています。患者にとって負担が少なく、安心して受けられる検査である一方、万能ではないため、PET-CTや内視鏡など他の検査と組み合わせて利用するのが現実的です。
がん検診を検討する際には、医師と相談し、自分の体質やリスクに合った検査方法を選ぶことが大切です。DWIBSは、がん検査の新しい選択肢として今後さらに広がっていく可能性を秘めています。
参照元
- 人間ドックなび「PET-CTとDWIBS比較」(2020年10月19日)
- 人間ドックのミカタ「DWIBS検査の費用と特徴」(2025年9月18日)
- LiST「DWIBSとPET-CTどっちを選ぶべき?」(2023年9月29日)
